バイオマス 再生エネ認定、欧米で対象外も

バイオマス発電に暗雲

植物由来の燃料を使うバイオマス発電に暗雲が垂れこめている。国は再生可能エネルギーの一つに認めて後押ししているが、欧州や米国の一部では認定しない例も出ている。森林を切り開いて発電の燃料となる植物の農園をつくれば、二酸化炭素(CO2)の吸収が減るとの指摘もある。国内でも議論が出始めており、認定を巡る状況が一変する可能性もある。

バイオマスや温暖化ガス吸収源としての森林については31日に始まる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも主要課題として議論される予定だ。

バイオマス発電は間伐材といった木や、燃やせるゴミ、食料廃棄物など、生物由来の燃料を利用する発電方式だ。燃やした際にCO2が出るが、燃料の植物が光合成で吸収するCO2と相殺したとみなし、再生エネに位置づけられている。

再生エネの拡大を目指して導入された固定価格買い取り制度(FIT)の認定も受けている。現在、日本で稼働しているバイオマスの発電能力は約450万キロワットあり、大型の石炭火力発電所4~5基分に相当する。

政府が閣議決定した中長期の戦略を示すエネルギー基本計画では30年度に800万キロワットまで引き上げる目標を掲げた。これにより国内の電源に占める比率は19年度の2.6%から5%に高まる。

再生エネの主力の一つになってきているバイオマスだが、その一方で国内外で懐疑論が出ている理由は主に3つある。

  • 最大の論点は燃料の調達の仕方だ。経済産業省などは国内の山や森林の生育を目的に木々を間引く「間伐材」が使われると見込んでいたが、コストが高くなりやすい。実際は、未稼働の分も含め、申請のあった発電所の7割以上(発電規模ベース)が海外から燃料を輸入する計画とみられる。米国の非政府組織(NGO)など17団体は20年9月、日本が米国から輸入する発電用のバイオマスが気候や森林、地域社会に悪影響を及ぼしていると経産省や林野庁に抗議の書簡を送った。米国では現地企業が間伐材ではなく、天然の木を切り倒して日本向けに輸出していると指摘した。
  • 2つ目は、燃焼時以外のCO2排出量をどう考えるかだ。ヤシを発電しやすいよう加工するときにメタンガスが生じ、温暖化ガスが排出される。海を越えて輸送すればその分だけ排出は増える。
  • 3つ目は生物多様性の観点の批判だ。海外では森林を切り開いてアブラヤシ農園をつくっている例があるという。東南アジアではバイオマス発電に伴い森林が減り、オランウータンがすみかを追われる事例もある。

欧州や米カリフォルニア州は、温暖化ガスの急増につながる森林破壊を伴う手法で得た植物を燃料としたバイオマス発電を再生エネと認めない方針を既に示している。こうした状況を受け、国内でもバイオマス発電の認定のあり方をどうするかの議論が始まっている。

立命館大学の橋本征二教授は「バイオマスは生産・輸送の過程でも温暖化ガスを排出する。排出削減につながらないバイオマス燃料は認めないようにすべきだ」と話す。経産省の担当者は今後の認証について「国として認証制度を検証し、不十分な点があれば改善していく」と語る。

8月に開かれた経産省の有識者会議。委員の一人からは「(海外含め)どこに適用されても『そうだろう』というものでないと認証の信頼性に課題が出る」と、日本の仕組みの見直しを促した。

ただ、既に稼働していたり、FITに認められていたりする発電所は多い。欧米からの批判が強まり、事業の見直しを迫られれば、影響は大きくなりかねない。

温暖化ガスの排出が実質的に増えるのに再生エネとして認定されているとすれば、FITや脱炭素の狙いとは矛盾する。50年のカーボンニュートラル(実質炭素排出ゼロ)に向けて、期待された役割に沿っていると言えるのか。不断の検証が必要になる。

出典:日本経済新聞(気候変動エディター 塙和也、岩井淳哉)