世界を襲う電力不足

世界の電力不足の真実 

中国の電力不足が日本のメディアに多く取り上げられている。しかし電力不足は中国だけではなくEUも深刻、日本でも昨年末から今年1月にかけての電力逼迫と電力卸価格高騰は記憶に新しく、来冬も電力不足が想定されている。 

世界を襲う電力不足の主因

世界のメガトレンドは脱炭素=2050年CO2排出量ゼロ(中国は2060年)、もちろん電力業界もこの流れの真っ只中にある。 電力不足となる主要因は、脱炭素を急ぐあまり発電にあたって化石燃料、特に温室効果ガスの排出量が多い石炭の利用を急速に締め出そうとしたことにある。 気候変動対策の観点から言えば、確かに温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電の利用は控えた方が良い。代わりに水力や風力、太陽光などの再エネの利用を進めるべきだし、現にそうした動きは世界的な流れとなっている。しかし、そのトップリーダーを自称するヨーロッパで、電力不足が最も深刻化しているという皮肉がある。 温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーだが、一方でその出力は気象条件に左右される。今年のヨーロッパは天候に恵まれなかったため、発電量が不十分だった。こうしたところに、景気の回復に伴う電力需要の急増が生じた。その結果、エネルギー価格が高騰する事態に陥ってしまった。 エネルギー価格の高騰は、特に※天然ガス(LNG)で顕著だ。8月下旬にはMWh 当たり40ユーロ台だったヨーロッパの天然ガスの価格は、10月に入って一時100ユーロを超えた。ヨーロッパ各国が再生可能エネルギーの不調を、温室効果ガスの排出が少ない天然ガスで補おうとしていることが、天然ガスの価格高騰につながっている。

天然ガス(LNG)発電は、石油や石炭といった化石燃料とくらべて燃焼時の二酸化炭素排出量が少なく、液化プロセス中に不純物が除去されるため硫黄酸化物やばい煙も発生しない、再生可能エネルギーがまだ十分に発達していない現在、天然ガスは現在のエネルギー事情にかなったエネルギー電源として重要性が増し急増している。

天然ガス(LNG)価格を押し上げた排出権取引制度

温室効果ガスの排出権の価格が高騰していることも、天然ガス(LNG)価格を押し上げている。ヨーロッパはEU ETSと呼ばれる独自の排出権取引制度を持っているが、ここで取引されている排出権の価格が急騰、2020年にはCO2トン当たり20ユーロ台後半で推移していた価格が、足元では60ユーロ台に突入しており、先高観も根強い。 ただでさえ高いのに、先行きがもっと高くなる排出権に手を出すよりも、天然ガスを確保したいとエネルギー業者が考えるのも無理はない。 EU ETSは気候変動対策を主導したいEUにとって肝煎りの制度だが、今回はむしろ「天然ガスの価格の高騰を招き、それがさらに電力価格を押し上げる」という事態をもたらすことになった。 なおヨーロッパの主な天然ガス供給元であるロシアが「売り渋り」を仕掛けているという見方もあるが、それは必ずしも正しくない。そもそも天然ガスは「相対取引」であるため、需要側と供給側の交渉次第で決まる。原油生産の副産物であるため天然ガスの価格は原油価格に連動するし、ヨーロッパはスポット契約が主ゆえに価格変動が激しい。 もしここで石炭火力発電が利用できれば、エネルギー価格の上昇は抑制されただろう。しかし近年の気候変動対策ブームを受けて石炭の供給・投資が絞られたため、各国で「石炭争奪戦」が繰り広げられている。それに2021年7月に野心的な気候変動対策を発表したばかりのEUにとって、石炭発電の増加は政治的に困難だ。

中国の電力不足

現在、中国も深刻な電力不足に陥っているが、それもヨーロッパの影響を受けたものだ。中国もまた、ヨーロッパ発の気候変動対策の動きを受けて石炭火力発電を控え、再エネの導入に注力してきた。同時に、温室効果ガスの排出が少ない天然ガスの調達を増やし、2021年前半の液化天然ガス(LNG)輸入量は日本を抜いた。 しかし、結局は中国もヨーロッパと同様に電力不足に陥り、その解消を石炭火力発電に求めるようになっている。しかし先述のように、世界的に石炭の供給が絞られていることや、政治的な理由から最大の調達先であったオーストラリア産の石炭を輸入できないことから、備蓄している石炭が枯渇する事態も懸念されるまでに至っている。

日本も来冬 電力不足

日本はLNGの大半を長期契約で調達しているため、足元の価格変動の影響を受けにくい。とはいえその影響から免れることはできず、冬季にかけて電力需要も高まることから、電力価格は徐々に上昇することになりそうだ。10月に入って緊急事態が解除され、景気回復に弾みがつくと期待される中で、電力不足はまさしくボトルネックとなるはずだ。日本の電力不足も主要因はCO2を多く出す火力発電所の休廃止だ。

火力電源の休廃止による電力不足

電力不足から見える性急な脱炭素

このような世界的な電力不足の発信源は、やはりヨーロッパと言わざるを得ない。 気候変動対策で覇権を握ろうとするEUが、再エネの推進と石炭火力発電の廃止を声高に求めていることは間違いない事実だ。とはいえ、石炭も重要な化石燃料、最新の技術を用いれば温室効果ガスの排出はかなり抑制できる。 性急な構造転換のために生じるコストに関して、何らかのサポートをする必要があることは明白だ。この電力不足は具体的な戦術を描き切る前に、戦略目標だけを掲げて見切り発車をしたツケだといえないだろうか。

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