新電力、コロナで0円調達 関西に割安ステイホーム料金

新型コロナウイルスの感染拡大による経済の停滞が、関西で新電力に思わぬ追い風となっている。工場などの需要が減り、関西での電力の卸売市場価格は5月に前年同月の半分に下落。調達価格が下がった新電力が低料金プランで攻勢をかける。知名度に劣る新興の電力会社にすぐに契約を切り替える動きはまだ限られるが、コロナ禍を契機に事業拡大に工夫を凝らしている。

新電力は自らが販売する電力の多くを日本卸電力取引所(JEPX)を通じて調達する。関西の5月の電力スポット(随時契約)価格の平均は1キロワット時3.6円と前年同月より46%下がった。東京のスポット価格(5.7円)より約4割安い。大阪では「ほぼ0円」での取引も頻発し、5月は最低値の0.01円で取引された時間帯が19日間で生じた。昨年5月は5日間だった。

関西で特に価格が急落しているのは電力が余っているからだ。太陽光発電に適した好天で九州からも電力が流入。そこに商業・観光施設の営業縮小や工場の稼働低下による需要減が重なった。関西の送電量は5月に11%前年同月を下回った。

夏季は通常、空調などの消費が増えるため電力需給が逼迫する。緊急事態宣言は解除されたが、経済活動が元に戻るには時間がかかりそう。足元では石油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格も下落しており「今後も安値が続く可能性がある」と日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一研究理事は指摘する。

価格の下落は新電力の経営にプラスだ。大阪市のある新電力では4月の販売量は1割減ったが、調達価格が下がり粗利益が4割増えたという。関西で2万件超の顧客を持つアースインフィニティ(大阪市)は、利益が確保できていることから5月に過去最高の広告宣伝費を投じた。

安値を受けて料金プランの幅も広がっている。全国で1千件以上の契約を持つエコスタイル(同)は使用電力を実質的に100%再生可能エネルギーに変えられるプランを無料で開始。約500件の顧客を持つ四つ葉電力(同)は家庭向けに日中の電気料金が他時間帯より最大5割安くなる「ステイホームプラン」を始めた。

家庭向けで10万件近くの契約を持つとみられるシン・エナジー(神戸市)も平日の昼間が安くなる料金を新設したところ、足元の申し込みは通常の2倍になっているという。新プランの投入などで2020年末までに新規に3万件の契約増を狙う。

一方、逆風なのが監視電力だ。関西のスポット市場で売り手の大半は関電とみられる。関電は売電先の内訳を開示していないが、20年3月期は総販売電力量の8%が卸売りや新電力への直売に流れた。安値が続けば「今期は収入が数十億円減る可能性がある」(業界関係者)。

卸市場の安値傾向を受け、九州電力では市場を通さず新電力に直売する「相対取引」の販売量を今後5年で1割以上増やす。関西を含む西日本の新電力と取引も増やす方針で、関電と顧客を取り合う可能性もある。

電力自由化後も関西で新電力は大手の壁を切り崩せなかった。関西の家庭向け電気契約のうち新電力の割合は19年末の販売量ベースで21%と全国平均(16%)より高いが、半数近くは大阪ガスとの契約とみられる。関電や大ガスの営業力や広告宣伝力に太刀打ちできなかったためだ。

電力は一度契約が変わると顧客を長く囲い込める特徴がある。調達価格の下落について、電力中央研究所の服部徹副研究参事は「新電力にとって少なくとも短期的には追い風だ」と語る。新電力ならではの値ごろ感や付加価値を示せれば、競争環境が変わる可能性がある。

出典:日本経済新聞(平嶋健人)